「JIS X 8341-3」対応のPMとして思うこと

2016年のウェブアクセシビリティの営業状況

この記事は、Web Accessibility Advent Calendar 2016の22日目の記事です。

2016年は、2015年に比べるとお客様からウェブアクセシビリティのご相談をいただくことが5倍以上、多かったです。
これは「障害者差別解消法」「障害者雇用促進法」や「みんなの公共サイト運用ガイドライン」の影響だけでなく、ウェブアクセシビリティはWebサイトの効果を最大化するために有効だという認知が少しづつ広がってきているんだと思っています。

私はもともとはデザイナー兼コーダーとしてWebサイト制作に従事してきたのですが、近年、ウェブアクセシビリティの営業をすることが多いです。
ちなみに、私は15人くらいの小さな制作会社に所属しています。ウェブアクセシビリティとユーザビリティを強みとしています。
中小企業は強みがないとホントに厳しいと思っています。専門性は伸ばしていきたいですね。

そんな小さな制作会社でも2016年は希望の灯る1年でした。
公的機関だけでなく、多くの大手一般企業様から「JIS X 8341-3」対応案件をご発注いただき、アクセシビリティを推進する意味でも、会社の利益を上げる意味でも、実りが多かったです。
本記事では実装面のウェブアクセシビリティと言うよりは、営業・PMとしてウェブアクセシビリティ案件に係る際のお話させていただきます。

私の状況

  • 15人程度のインターフェース(ウェブサイト・スマホアプリ・デジタルサイネージなど)の制作会社に所属
  • 主に営業・PM(プロジェクトマージャー)・アクセシビリティコンサルタントとして活動
  • 自社でインターフェース(主にWebモックアップ)を制作し、他のシステム会社様が組み込みを実施する案件が多い

受注前後の状況

  • Webサイトリニューアル案件において「JIS X 8341-3」対応の引き合いは多い(直接お客様からご相談いただくこと4割、広告代理店さん経由6割くらい)
  • 私の半径5メートル以内では公的機関のみならず、大手一般企業様も「JIS X 8341-3」の関心は高い
  • それでも、お客様がウェブアクセシビリティのことをよく知らないことが多い
  • その場合、成果物の粒度について相互の理解が不可欠(主にウェブアクセシビリティ関係)
  • 営業時は「JIS X 8341-3」対応だけでは決め手にかける(費用対効果はどうなのか?など)
  • ペルソナ・カスタマージャーニーマップ作成などユーザビリティへの配慮を含めた提案をすることが多い
  • あとは成果物・工期・費用の調整になる
  • 信用をいただけると、定期的な改善施策(PDCA)を含めたコンサル契約につながる

他社様との協働プロジェクト

プロジェクトの規模が大きくなると自社だけでは対応しきれないので、他社様と協働してプロジェクトを進行することになると思います。
私の場合は、自社でUXを定義してWebモックアップを作成し、他のシステム会社様がWebモックアップに対して組み込みを実施することが多いです。

よくある課題

システム会社様が「JIS X 8341-3」やウェブアクセシビリティについてよくご存知でない場合に課題が発生することが多いです。
例えば、Webサイトリニューアル案件において、システム会社様が「JIS X 8341-3」対応案件が初めての場合は、共通認識を作ることが大変です。
関係者を集めて勉強会を行ってウェブアクセシビリティについての共通認識を作った上で、組み込み時の流れや設計書関係の成果物の粒度を話し合います。

また、関係者間で相互理解を深めてリスクヘッジしてからプロジェクトをスタートするのが理想だと思うのですが、政治的要因が関係して相互理解を深める前にプロジェクトがスタートしてしまうこともあると思います。
そうなると、開発工程後期になってから想定していなかった課題が増えてしまうケースがあります。誰もが避けたい状況ですよね。

例えば、私の場合ですと事前に定義した成果物のWebモックアップ自体の品質には問題がなくても、システム組み込み時の設計書関係や単体・結合テストの仕様書に、事前の協議内容以外に後から追加で「この部分にウェブアクセシビリティの記載を含めたい」などといったご要望をいただき、場合によっては、その影響でWebモックアップやシステム設計自体に影響が出てしまうことがあります。

まとめ

プロジェクトをきれいにゴールに運ぶためには、当たり前のことですが、関係者とコミュニケーションを密にとることが必要です。
エンジニアが良かれと思って自分だけの判断でaria属性を付与することが、必ずしもプロジェクトに取って良い結果に働くとは限りませんし、「JIS X 8341-3」の試験時に、問題を大きくしたくないためにエラーを大目に見ることが致命的な問題に発展することもあります。

私は、実装面のウェブアクセシビリティは調べればある程度であれば答えは入手できるものだと認識していますが、ガイドラインや設計書やテスト関係も含めたドキュメンテーションにウェブアクセシビリティをどう記載していくかはプロジェクトごとに異なるため、担当者の技量でその都度、仕様を決定していくことになると認識しています。

ドキュメンテーションはウェブアクセシビリティの理解を助け、Webサイトを運営していく中でのウェブアクセシビリティの維持に貢献するものなので、ガッチリ作り込んで行きたいですね。

ちなみに、案件によりますが私はWebモックアップ制作における製造工程を大まかに次の3点に分類した場合、アクセシビリティに関するドキュメンテーション作成工数は全体の3割程度を占めることがあります。
(それが妥当なのか、多いのか、はたまた少ないのか一概には言えませんが)

  1. 設計(デザイン)
  2. 開発(コーディング・組み込み)
  3. 単体・結合テスト

以上、15人のウェブ制作会社のPMから、2016年の「JIS X 8341-3」対応のレポートでした。
ご清聴ありがとうございます。


私の概略

職能
  • Web アクセシビリティ エバンジェリスト & コンサルタント
  • プロジェクトマネージャー
  • サービスデザイナー
  • UXデザイナー
専門
  • Web アクセシビリティ
  • HCD
ワークスタイル
  • 朝は早くから作業を開始して早めに切り上げる
  • 必要なときに必要な場所にいる(固定したオフィスへの出社義務はない)
  • 自社のメンバーは、全員リモートワーク
  • 残業・休日作業は状況に応じて柔軟に対応
主な業務内容
  • お客様先に訪問など
  • お見積書・WBS・提案書作成など
  • PM(主にクライアントとの折衝・要件定義・ドキュメンテーション・プロジェクトマネジメントなど)
  • 作業(主にWebにおけるUXD、ドキュメンテーション、Web アクセシビリティ 診断など)